呼吸器外科

呼吸器外科について

当院では、2020年4月から呼吸器外科の診療を開始しました。呼吸器外科で取り扱う疾患は、肺がん、気胸、膿胸、縦隔・胸壁腫瘍、胸部外傷などです。
当科のポリシーは「自分や家族だったら、受けたい治療を提供する」です。

われわれ医療者自身が病気になったら受けたいと思う治療を行い、受け入れられない治療は基本的には行いません。
誰しもが、がんのような悪性腫瘍の診断を受ければショックを受けますし、それが肺のような致命的な臓器であれば、なおさら不安は強いと思います。

確かに、すべての病気が必ず治るわけではありませんが、肺がんは早期であれば、手術により根治が可能な病気です。また、ほとんどの手術が、胸腔鏡というカメラで行います。傷が小さく、入院期間も短く、痛みも少なく、比較的カジュアルなものとなっています。
もし進行がんであったとしても、現代はさまざまな治療薬により、患者さんと「がん」との共存が可能になってきています。

2020年3月までは、飛騨地方での肺がんをはじめとする呼吸器外科の手術治療はできなかったため、とくに肺がんの患者さんは遠方の施設で治療を受けなければなりませんでしたが、今後は、飛騨地方での手術、放射線、薬物療法のすべてが可能となります。飛騨地方の方々は、同じ健康保険料を払っているにも関わらず、地方では十分な治療が受けられないアンフェアな状況が続いていますが、これを少しでも是正していきたいと思います。

診療内容

肺がん

肺がんは、最も死者の多い部位のがんです。手術の適応となりうるのは進行度がステージIからIIIAまでです。

標準的な肺がん手術である胸腔鏡下肺葉切除術では、平均して2〜3時間ほどの手術時間となります。開胸手術と比べて痛みが少なく、入院期間は1週間程度です。痛みや、残った肺の機能に応じてリハビリを行い、早期での退院を目指しています。
小型の肺がんでは、手術前に組織診断がついていないことも少なくありません。このため、肺の一部を胸腔鏡できりとり、手術中に顕微鏡検査を行い、悪性であれば胸腔鏡のまま、根治手術をそのまま行います。より確度の高い治療を心がけています。
肺癌の治療は
1.手術 (久美愛厚生病院で実施)
2.放射線 (高山赤十字病院)
3.化学療法 (久美愛厚生病院)
の3つの柱と緩和治療で成り立ちます。これらの治療を組み合わせることで、肺がん治療を飛騨地域で完結することが可能となっています。

気胸

肺がパンクして、縮んでしまう病気です。肺がんと同様もしくはさらに小さい傷で、胸腔鏡下肺嚢胞切除術を行っています。再発しやすい病気であり、再発予防としての、吸収性線維シートによる、胸膜の補強、被覆を要します。
手術の適応は1.ドレナージで空気漏れがとまらない。2.再発症例。3.嚢胞が少なく、手術が有効な症例(とくに成人症例)。4.両側気胸(異時性も含む)です。
10代の患者に多く発生することが知られています。手術後の再発が多い年代でもあり、手術実施の可否については、慎重な選択を要します。

縦隔腫瘍

両肺に挟まれた胸部の真ん中・心臓の周囲にできる腫瘍です。胸腺腫などの悪性腫瘍から、奇形腫、良性神経腫瘍などの良性腫瘍に対しても胸腔鏡手術を実施していますが、大きさにより、胸部の切開を伴う手術を行います。

膿胸

胸の内側に膿がたまる病気です。ごく早期の場合にはドレーンというチューブ留置で根治が期待できますが、多くの場合は、手術的な根治手術を要します。比較的早い段階の膿胸であれば、胸腔鏡での手術が可能です。膿胸を放置した場合は、肺が縮小し肺機能の低下を招きます。多くは肺炎に随伴して発生していますので、肺炎治療と並行して行います。

胸部外傷

転落外傷、交通外傷では胸部のみならず、頭部、腹部、四肢等にも外傷を負うことがあります。他科と連携して、治療にあたります。胸部外傷で緊急手術を行う場合は、大量血胸、胸郭変形を認めるものなどで緊急手術を行います。心損傷や大血管損傷が疑われる場合には、状況は厳しいと言わざるを得ません。

以上のような呼吸器外科手術に際して、呼吸器外科専門医を含んだ外科チームでの手術治療を行っています。また、当院呼吸器内科と合同のカンファランスを行い、治療方針を決めています。

外来担当医表

診察室51 関村 敦
診察室52 関村 敦
(初診のみ)

医師紹介

呼吸器外科部長

関村 敦

せきむら あつし

専門領域
呼吸器外科
学会資格等
日本外科学会専門医・指導医
日本呼吸器外科学会専門医・評議員
日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医
がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了
臨床研修医指導医

診療データ

 

肺癌切除手術 転移性肺腫瘍 気胸 膿胸 良性ほか肺切除 胸腔鏡生検 縦隔腫瘍 その他 合計
2022年症例数 39 3 12 3 4 0 3 4 68
2023年症例数 33 6 9 17 6 1 2 4 78
2024年症例数 38 8 13 17 7 0 1 3 87